昨日の深夜のこと…
ピンポーン。
予期せぬ時間にウチのマンションの共同玄関のチャイムが鳴った。
これはつまりオートロックの扉を開けてほしいということである。
枕元に置いていた腕時計を確認すると午前2時少し前。
インターホンのほうを見ると確かに人影らしきものが映っている。
ピンポーン。
もう一度鳴る。
友人が私の部屋に来るときはあらかじめ携帯電話で連絡してくることがほとんどなため、普段はチャイムが鳴ってもほとんど無視する(新聞の勧誘とかが多いため一々応対するのが面倒くさい)のだが、今思えば半分寝ぼけていたのだろうか、特に何も考えずインターホンの受話器を上げた。
「はい?」
「あ、わたしわたし〜。開けてよ〜」
声の感じからして酔っている。しかもかなり。
しかしながら私はその声に覚えが無かった。やむなく近くに置いていた眼鏡をかけ、インターホンに映る女性の姿を見る。
…全然知らない人だ。
「えーっと。どちらさん?」
「わたしよわたし〜。し・ず・か(仮名)。さっき電話したでしょ〜」
こんな時間に突然電話してきて泊めてくれなんてなかなかいい性格の女性のようだ。
「いや?電話なんてもらってへんよ。」
思わずこんな返事をしてしまったあたり、私もまだかなり寝ぼけていたらしい。
「うそ〜。したよ〜。じゃあもう一回かけるからね!」
そういうと女性はインターホンの画面から消えていった。
ウチのマンションはビルとビルの間にあるせいか、構造上共同玄関では携帯電話の電波が届かない。
しばらくして。
ピンポーン。
またチャイムが鳴った。もちろん相手は「しずかさん」。
「はい?」
「もー、どうして出ないのよ!なにしてんのよ!」
今度はひどくご立腹だ。ま、この時間だからな。電話をした相手が待ち疲れて寝てしまったのかもしれない。
「もしかして誰か連れ込んでんじゃないの?早く開けなさいよ!」
「いや、だから…」
部屋番号、間違えてますよといいかけたところを遮られた。
「いいわよ!じゃあ朝まで鳴らし続けてやる!」
そんなことをされてはかなわん。
慌ててエレベータに乗り、共同玄関まで降りる。
私の姿を見つけても「しずかさん」はチャイムを鳴らし続けている。
…そりゃそうだ。お互い他人だし。相手からしたら私はターゲットの人物ではないのだから。
私はゆっくりと近づき、
「あの… あなたがチャイムを鳴らしている部屋の者ですが…」
「へ?」
「たぶんですけど… 部屋の番号、間違えてません?」
「は?」
「いや、だから番号」
「えーっ!マジで!?(本当にこう言った)」
「うん…」
「もー!なんでもっと早くに言わないのよ!」
と言うや否や彼女はエレベータに乗り込んでいった。
あまりの出来事に呆然と見送る私。
エレベータは6階で止まった(私は5階)。
おそらく50○と60○とを押し間違えたのだろうと推測される。
部屋に戻り時計を見ると午前3時を少し回っている。
あー、やっぱ女性は強いなぁ。自分だったら見ず知らずの相手にあんなこと言えないよなぁ。なんて思いながら再びベッドにもぐりこんだ。
おそらく彼女は彼の部屋のインターホンを鳴らし続けているはず(すぐに起きてきたかもしれないけど)。
6階にお住まいの皆さん、ごめんなさい。
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